こんにちは。はじめまして。
PHLUXXのマスタリングエンジニアことMASSです。
今日はマスタリングの意味について知ってもらいたくて記事を書いてみました。
「マスタリングって、何をしてるんですか?」
「音圧を稼ぐこと?」
「いやいや、少なくても音圧を稼ぐことだけではないよ笑」
と答えつつ、
どこまで説明しようか、いろいろなことが頭をよぎります。
時代によってマスタリングの形は変化してきたからです。
そして、今も変化をし続けています。
どういうことか説明をするために、僕が知っているマスタリングの歴史を説明させてください。
マスタリングの変遷
CDの登場 アナログからデジタルへ
2016年現在、主流のメディアはCDから配信に移り変わろうとしています。
これも大きな変化ですが、CDの登場がマスタリングの世界では最も大きな変化でした。
CDが登場した時、当時のエンジニアたちに衝撃が走りました。
初めての本格的に普及したデジタルメディアだったからです。
CDはその便利さから爆発的に広まっていきました。
しかし、当時はアナログのビニール盤や、カセットテープが主流だったので、製作陣はアナログからアナログへの技術しか持っていませんでした。
CDはデジタルメディアなのでアナログからデジタルへ音楽を記録する技術が必要です。
それは、これまでのノウハウが通用しない全く別世界だったのです。
そこで、どうしたらアナログの音を綺麗にデジタルの中に収めることができるのか、あらゆる職人を集めて模索をしました。
オープンリールの技術者、コンソールの製作者、デジタルの専門家、アナログ盤のカッティングエンジニア etc……。
どうすれば、いい音でCDにできるのか。
どうすれば、アナログの気持ち良さをCDに収められるのか。
どうすれば、もっと聴きやすいCDを作れるのだろうか。
様々なジャンルの専門家が第一世代のマスタリングエンジニアになり、日進月歩で技術をつみ重ねていきました。
それが、現代のデジタルの枠に収めるマスタリング技術の基本になっています。
CDの時代 デジタルの中での大きな変化
さらに、CDが主流になってきてもマスタリングの姿は変化をし続けます。
例えば、1980年代のCDと2000年代のCDを聞き比べてみると、音量が全く違うはず。
2000年に入り、デジタル技術が大きく進化することで、どこまでも大きな音量をCDの枠の中に収めることができるようになったのです。
そうなると、差別化するために、CDの音量の大きさを追い求めるようになります。
きっと、「マスタリング=音圧を上げる」という考え方はこの頃に根付いたのでしょう。
2000年代から2010年代にかけては、
DAWが大きく普及することにより、制作のあり方も大きく変化していきました。
アナログで行っていたことがデジタルに次々と置き換わっていき、ついには、パソコン一つで制作ができるようになりました。
そうなることで、マスタリングの役割もまた変化していきます。
ここからはあくまでも一個人の見解ですが……。
これまでは、アナログで作っていたからこそ、マスタリングの段階では味付けのない正確な処理を求められていました。いかに存在感を感じさせないかがある種のステータスだったように思います。
しかし、現代はデジタルで作るからこそ、アナログ特有の味つけを加えることが求められる傾向が強くなってきたように感じています。聞いていて心地いいと感じられる最後の質感や立体感をマスタリングでプラスしていくのです。
時代の変化、メディアの変化、制作現場の変化……。
さまざまな要素が合わさり最適解は常に変わっていくのです。
配信の時代 フォーマットの多様化
いま、CDから配信へと主なメディアが移りつつあります。
圧縮技術が大きく発達することで、CDよりも高音質な音を
いつでも手軽に聞くことができるようになりました。
一方で、配信は音圧に弱いサービスがあったり、配信先ごとに特徴が変わったりします。
音圧が、かえって不利に働いてしまうようなケースも存在します。
CDが登場した時のように、CDを作るノウハウだけでは対応できないのです。
音楽のあり方が広がりを見せることで、マスタリングの世界にも、多様性を求められる時代が訪れているのです。
結局マスタリングって何なのさ?
さて、長々と語ってしまいましたが、
マスタリングの歴史の中でただ一つかわらないことがあります。
それは、マスタリングは
音楽をその時代に合わせて磨いていく戦いだということです。
今、何が求められているのか。
今なら、何が出来るのか。
それを追い求めているからこそ、
時代が変われば、やっていることも変わります。
だから、
「マスタリングって何をすることなの?」
と聞かれた時に、僕はこう答えるようにしています。
「マスタリングは音楽を今一番格好良く聞けるように磨くことだよ」
ちょっと、格好つけすぎかもしれませんが、真剣です 笑