こんにちは、PHLUXXのマスタリングエンジニアこと、MASSです。
先日、マスタリングを学びにNYのスターリンサウンドにお邪魔してきました!
と言っても、いきなり訪ねて教えてもらったというわけではなくて。
僕の友人であり、音楽プロデューサー兼SSWの石川晃次さんに誘っていただき、セッションに立ち会わせてもらったのでした。
石川晃次さんは、フィリピンで世界で活躍するトップクラスのミュージシャンを集めて、一流の機材で作曲、レコーディング、ミキシングまでを一人で行うタレントに溢れた方です。
DAWの普及から、インディペンデントに音楽制作を行うインディーズの一つのあり方を体現されています。
これを機にPHLUXXで提携をさせていただくことにもなりましたので、是非こちらからプロフィールをご確認ください。
スターリンサウンドって何?
スターリンサウンドというのはほぼ全ての洋楽トップチャートのマスタリングを行う、最高峰のマスタリングエンジニア集団です。
ここのディスコグラフィを見れば、大ヒットしたあの曲、あのアルバムだらけだと思います。
立地もNYCの超一等地のショッピングモールの上をフロアごと使っていて、日本だと考えにくい規模感でした。
それだけマスタリングの重要性が米国だと認知されていることのあらわれなのかもしれません。
グレッグカルビ氏のマスタリング
今回お邪魔したのは、トップ4と呼ばれる一人のグレッグカルビ氏。
日本のPOPS界隈ではあまりお名前を聞くことはないのですが、
John Mayer、Norah Jones、David Bowie、Eric Claptonなどなど
僕が憧れ、聴いて育ってきたアーティストを手がけているキャリア40年の方です。
彼の手がけた作品は、明らかに彼特有のトーンがあります。
クレジットを見る前から、聞けばすぐにこれはグレッグ氏がやった作品だなとわかります。
そのトーンの大ファンであり、いつかお会いしたいと考えていました。
そんな夢が石川晃次さんのお陰で叶ってしまったのでした。
いきなり文化の違いを感じたこと
突然押しかけて、嫌な顔をされたら、端っこの方で見学させてもらおう……。
そう思っていたのですが、東京のマスタリングエンジニアです。と挨拶をすると、
二言目には
「OK,全部やり方を教えるよ。今日は授業をしよう!」
と言ってくれたのには感動しました。
日本だとノウハウは隠すもので、それは大手でも個人も変わらないところがあります。
こう言ったマインドは日本人も見習うべきだなぁと、セッションが始まる前から圧倒されっぱなしでした。
グレッグ氏が教えてくれ心がけ
とはいえ、詳細を勝手に公開するのは、礼儀に欠けるので彼が教えてくれた一般的な心がけを幾つか皆さんにご紹介できればと思います。
その1 道具は基本2種類。3種類が限界。
彼曰く、同じ役割の道具を3種類以上持つと可能性が広がりすぎるようで、基本は対極になる道具を2種類使ってサウンドメイキングをしていました。
例えば、ダーク傾向のコンプとブライト傾向のコンプといった調子です。
対極の2つを使い分けることで、楽曲に応じたトーンを作っていました。
その2 必要な時だけ大音量で聴く。
運転にたとえてモニタリングについて教えてくれました。
「日頃からアクセル全開にはしないように、必要な時以外は小さな音量でモニタリングをして耳を休めることが大切だよ。」
実際、一曲を丸ごと爆音で聞くことはほとんどなかったように思います。
その3 迷ったらみんなでA/B。
どちらも正解だと思われる分岐に対峙した時には、音を切り替えてA/Bをして全員でジャッジしていました。
一緒に判断することで、マスタリング自体を楽しめるのも嬉しい心遣いでした。
その4 自分のフォームを崩さないこと。
「自分なりに判断する順番を決めておき、決して後戻りはしないこと。
もし、その順番やルールが崩れてしまっているときは失敗している可能性が高い。」
と大事な心構えを教えてくれました。
特にマスタリングは瞬間の判断スピードが大切なので、自分の型をしっかり持つ必要があります。大いに共感できるポイントでした。
グレッグカルビ氏に依頼するには。
スターリンサウンドのホームページから依頼をすることができます。
見積もりを日本人の担当者とやりとりをして、予約をすることができます。
立ち合いなしでも出来ますが、立ち会うことを全力でオススメします。
楽しいこと間違いなしです!
「John Mayerはこんなこといっていた!」とか、「Nora Jonesはこういう性格なんだよね。」とか。ちょっと信じられないような話がたくさん聞けますよ笑
今回出来上がった作品
上記からご購入いただけます。
(クリックいただくとamazonに飛びます。)
バラエティに富んだ作品で、80年代をオマージュしつつも現代でしか作ることができないバリエーション豊かな作品に仕上がっています。
セッションが終わってみて
昼食を石川さんとグレッグで一緒に食べた時に、グレッグが半分冗談で
「俺の引き継ぎは頼んだよ笑 一生懸命働くんだ!」
と気さくな感じで言ってくれました笑。
聞いてみれば、こうやって同業者が勉強のために訪ねてくることはほとんど無いそうで。
身にあまる光栄ですが、この経験を最大限に活かしていつかは彼と肩を並べることができたらいいなと感じました。
僕は、アメリカだから優れている、日本だからダメだと言うつもりは一切ありません。
ただ、今回、わざわざ僕がNYに行ったように、
いずれは外国人の方がわざわざ日本にマスタリングをしに来てくれる……。
そんな技術水準を僕ら日本のマスタリングエンジニアも持たなくてはいけない。
そう決意を新たにして、帰国してまいりました。
大先輩が教えてくれた心構え、技術を活かしつつ、
今後も皆さまに喜んでもらえるようなマスタリングを提供していきたいと思います。