こんにちはPHLUXXのマスタリングエンジニアこと、MASSです。
少し前のニュースになりましたが、個人的に衝撃的だったニュースをご紹介できればと思います。
Spotifyが音圧のノーマライズを-12LUFSから-14LUFSに引き下げたというニュースです。
このことは洋楽の音が大きく変わるターニングポイントになるかもしれません。
これは簡単にいいますと、Spotifyで再生されるときにはどのぐらいの音の大きさで再生されるのか?という話です。
Spotifyhには、オーディオノーマライズという機能が搭載されていて、作品ごとの音量がバラバラになってしまわないようにする仕組みが搭載されています。
そのため、大きな音量に作品を仕上げたとしても、結局はボリュームが下がった状態で再生されていました。
で、今回、その音量が更に下がったというニュースが発表されたのでした。
そもそもLUFSって何?
そう言われても、あまりピンと来ない方のほうが多いかと思いますので、簡単に解説をさせてください。
LUFSというのはラウドネスメーターで使われる単位のことです。
音に対して、人間の聴覚に似たフィルタリングをした上で、どのぐらいの「音の大きさ=ラウドネス」で音がなっているかを示す値です。
音楽の世界ではあまり馴染みの無い単位だとは思いますが、実は放送の世界では2013年10月から導入をされています。
ご興味がある方は
http://www.j-ba.or.jp/category/t032
こちらにT032のラウドネス運用基準の詳細が載っていますので確認してみてくださいね。
音楽ストリーミングサービスにおけるSpotifyの立ち位置と考察
Spotifyは全世界のサブスクリプション型配信サービスのシェアの43%を占めています。
そのサービスが、音量統一の基準をあえて引き下げたということに、個人的には大きな意思表示を感じています。
現状、20.9%を占めているアップルミュージックにもSoudCheckという音量を統一する機能がついているものの、その機能を利用するかどうかはユーザーの判断に委ねられています。
が、最大手のSpotifyの対応に各種配信サイトたちが対応を引っ張られることは充分にありえる話だと思うのです。
日本においては、Spotifyはまだ上陸して間もない状況ではありますが、米国ではメインのストリーミングサービスとして利用されています。
そういった状況を考えてみると、洋楽の音楽制作の現場は最終的にリスナーに届く環境を意識せざる得ない状況になってきたといえるでしょう。
マスタリングエンジニアとして体感する-14LUFS
日本のPOPやROCKのCDで比べてみると、相当小さい音量だと言えます。
というのも、音圧が大きく入っているCDは-6LUFS、余裕が感じられるものでも-10LUFS程度のものが多いです。
-14LUFSというのは、波形で見てみると、ピークリミッターが殆ど反応しない程度の音量で、余裕がある形で波形に収めることができる音量です。
ですので、手元でボリュームを操作して同じボリュームで聞いてもらうことを考えると、ダイナミクスの幅がある状況で音楽を楽しむことができます。
CDと比べると随分小さい音量のように感じられますが、小さすぎるかというと、そのようなことはありません。
スマートフォンからヘッドフォンで再生する分にはフルボリュームで丁度良い音であったりもします。
音量が自動的に下げられることのメリットとデメリット
音量が統一されることのメリットは、
・リスナーが手元でボリュームを変更する必要が無いこと。
・音圧を無理に稼ぐ必要が無くなること。
です。
一方で、デメリットとしては
・音圧が高い音源の迫力が無くなってしまうこと
・音量による音楽的表現が制限されてしまうこと
・アレンジが仕組みに引っ張られて、意図的にダイナミクスを大きくした作品が量産される可能性がある。
が挙げられます。
ピークリミッターの出現で、簡単に大きな音を作れるようになりましたが、一度大きな音に圧縮してしまうと、元々の音に戻すことはできません。技術的なお話は次回に譲りますが、結果として音圧が高い音源はのっぺりとした音で聞こえてしまう可能性があるのです。
次回は、どうして高い音圧が不利なのか、今できる具体的な対処法などについて語っていきたいと思います。